紀行文の元祖。その存在は知っていたが、今まで手付かずでようやく読了。ドイツに来て、初めて海外に住んで3年というこの時期に読むことができたのは大きい。というのも、著者はアメリカ、ヨーロッパ、アジア22ヵ国を旅するのであるが、その真骨頂は旅をして2年が経過した頃から、日本に帰って旅を回想するまで。
『外国に住むことの最大の魅力(また危険)は、自分がその外国の社会に何ら責任がない、そこでは何をしてもよい、あるいは逆に何もしなくてもよい、すくなくとも自分の行為なり状態なりに心理的制御を感じなくてすむ、』
何となく他の言葉、そして感覚では掴んでいたものの、今の自分の状態は正にこれだなと。確かに、昔と異なり、インターネット等を介して日本の情報はほぼタイムリーに入ってくるのであるが、本質的には全く変わらないと思う。いわゆる海外ボケで帰国後、日本に馴染めないというのもここから来るのだろう。
旅行を含めて、海外に出ることの意義として、日本を外から見るということは言い尽くされた感があるが、本当にそれ以外の何者でも無いなと再認識したと同時に、「西洋」と「アジア」というフレーム。著者は、アジアのいわゆる貧困問題も絡めて、とある場面で、『私は、アジア人である私は、アジアに帰って行くより他はないのだ。』と表現しているが、このような視点は重要だなと思うと共に、今後、決してヨーロッパかぶれと成らない様、注意しなければと肝に銘じた。
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